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福岡地方裁判所 昭和32年(ワ)1125号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一請求原因一の事実中原告が鯨軟骨の製造並びに販売を目的とする会社であることは被告の明らかに争わないところであり、原告が(3)、(4)(5)(7)の各登録商標を有することはいづれも当事者間に争いがなく、<証拠>を綜合すると原告は(1)、(2)、(6)の各登録商標を有するものと認められる。

しかし(3)(4)の商標権は旧商標法第一〇条第一一条商標法施行法第六条により第二回の更新なき以上第一回の更新時より二〇年を経過した昭和三七年に存続期間満了により消滅したものといわねばならない。

しかして右引用証拠によると、(1)(2)の商標は旧商標法施行規則(大正一〇年一月一七日農商務省令第三六号)第一五条所定の類別(以下旧、類別という)第四五類鯨、鮑その他一切の魚、鳥獣肉、貝、海藻の各種漬物ならびにその缶詰、箱詰、瓶詰、桶詰その他の各種の容器に詰めた漬物を指定商品とし、(5)の商標は旧第四五類漬物を指定商品とし、(6)の商標は旧第四五類佃煮を指定商品とし、(7)の商標は旧第四五類鯨の軟骨の粕漬及び鳥獣、魚介類の味噌粕漬、塩漬を指定商品とするものであることを認めることができる。

二被告がその製品たる鯨軟骨の粕漬に「美鶴松浦」又は「美鶴松浦漬」の商標を付して販売していることは当事者間に争いがない。

三そこで被告の右商標が原告の登録商標に類似しているか否かについて判断する。

<証拠省略>原告会社は昭和二七年に設立されさものであるが、原告会社の前身である山下善市の個人営業時代の明治年間において、右山下の妻ツルが鯨軟骨を粕漬にする製法を発明して以来「松浦漬」は大正年間において各種団体から表彰をうけており、戦後においても辞典、新聞、学習雑誌等において「松浦漬」が佐賀地方における名産として紹介されていること、またその販路も全国に及び、その売上高も年間六千万円ないし七千万円に達していることが認められ、これらの事実に徴すれば「松浦漬」の商標が原告の製造販売にかかる鯨軟骨の粕漬を表示するものとして日本全国にわたり取引上広く認識され、取引者、需要者間に周知著名なものであることを認めることができる。

従つて被告の使用する商標と原告の登録商標は必らずしも称呼上又は観念上類似するとは言えないとしても、これ等商標の要部は「松浦」又は「松浦漬」の文字にあることが明らかであるから、被告がこれ等の文字を有する商標を指定商品たる鯨軟骨の粕漬に標章として使用するときは原告から出たものと一般世人に誤認させ、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があることは明らかである。このことは証人山下善尚の証言によつて認め得るように、被告がその製品に「美鶴松浦漬」「美鶴松浦」の商標を使用することにより、被告の製品は原告の製造販売にかかる「松浦漬」と混同され、顧客から原告に対し「味が違うことがある」とか「値段が一定していない」とかの苦情を述べられたことのある事実からも窺うことができる。

そうすれば被告は商標法第三七条第一号に言う指定商品について登録商標に類似する商標を使用し原告の商標権を侵害するものというべきである。

尤も被告が元原告主張のような商標登録を得ていたことは当事者間に争いがないが、<証拠>によれば原告主張の日右商標登録を無効とする旨の審判がなされ、該審判は原告主張の日確定したことが認められるので、右商標登録自体は前記原告の商標権侵害の判断に何等の消長を及ぼすものではない。(江崎弥 鍋山健 松信尚章)

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